特権ですから
1:59 22 Oct



「あれ、マサキ君?」

むかつくぐらい爽やかな声が聞こえると思ったら、やっぱり赤髪眼鏡の人だった。
今日は隣に霧野先輩がいるし(なんたって先輩からデートに誘ってくれたのだ、貴重すぎるこの日を邪魔されてたまるか)、できるだけ関わりたくない。
そう思って先輩の手を引いて逃げようとした、ら。
ぼふっ、と勢いよく人にぶつかってしまった。
すみません、と言おうとして顔が真っ青。
だってこの人、俺の知ってる人だ。
固まってる間に駆け寄ってくる、赤髪。
先輩はわけがわからないといった顔で(そりゃあ当たり前だ)、おろおろしている。
ちょっと可愛い。

「聞いてよ風介!マサキ君たら逃げようとするんだ」
「……ああ、それは仕方ない」
「ひどっ!」

特にひどいとも思ってないくせに、と心の中で悪態をつく。
この二人は呆れるほど仲が良い。
孤児院に遊びに来るときは大体一緒にいるし、付き合ってるとも聞いた。

「邪魔してすまなかったな。ヒロト、ほら行くぞ」

よかった、風介さんはわかってくれた。
ほっと胸を撫で下ろす。
すると、腕を引っ張られたヒロトさんがふと先輩の方を見て、口を開いた。

「あ、それとさ、」
「……なんですか?」
「その子彼女?可愛いね」

その子、とはもしかしなくても先輩のことだろう。
やはり女子に見えたか、いや、俺だって最初は女子だと思ったが。
恐る恐る振り返ると、先輩は微妙な笑みを浮かべていた。

「狩屋、この人達は……」
「孤児院にいたときの知り合いです」
「へえ、知り合い、ふうん……」

ものすごい棒読み加減、そんなに女子と思われたことがショックですか。
ここではい彼女ですって言ったら先輩どうなるんだろ。
まあ、言わないけど。

「ヒロト!!」
「はいはい、わかってるよ」

ほら、先輩に可愛いなんて言うから風介さんが怒った。
ざまあみろ。

「……風介さん、俺の分も叱っといてください」
「なんで!?」
「よしきた」

それと、先輩に可愛いって言っていいのは俺だけなんですよ!




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