夢に溺れる
0:41 14 Oct



夢を見る。
毎日毎日、同じ夢。
学校に行くと校門に霧野先輩がいて、挨拶するとにっこり「おはよう」って返してくれる。
夢の中の霧野先輩はとても優しい。
俺がいくら嫌がらせをしたって、睨むことなく許してくれる。
「まったくお前は、」って呆れながら霧野先輩は笑う。
それから、神童先輩に見せるような顔を俺に向けてくれる。
現実の霧野先輩だったらありえないようなことが、夢では起こる。
一体誰が得するんだ。あ、俺か。
夢の中の霧野先輩は、ふんわりと砂糖菓子みたいに笑う。
「狩屋、」ってまるで俺だけが特別みたいに名前を呼ぶ。
ああ、現実の霧野先輩に見せてやりたい。
あんた俺にこんなふうに接することできるんだって。
俺に対してこんな顔できるんだって。
そして、「ほら、やってみろよ」ってとびきりの笑顔で言ってやりたい。
先輩の引きつったような顔を想像して、ぞくぞくする。
現実のあの人は絶対に嫌がるだろうから。

「おはよう」

霧野先輩がにこりと笑う。
つられて笑顔を返す。
俺はこの人の笑顔が嫌いではない。
そりゃあ怒らせたときの顔も好きだけど、いや、好きとかじゃなくて、悪くない。
そう、悪くないのだ。

「現実でも見てみたいな、なんて」
「何が?」

さっき軽く挨拶を交わした先輩が、きょとんと俺を見ていた。
ここで馬鹿正直に言ったら、「ふざけてるのか」ぐらいは言い返されると思う。
だが、これは夢。
現実の霧野先輩ではない。

「先輩の笑顔、ですよ」

夢の中の先輩は異常なほど優しくて、べたべたに甘くて、でも先輩から話しかけてきたことは一度もなかった。
耳まで真っ赤になった先輩に「アホか!!」って怒鳴られるまで、俺はそれを忘れていたんだ。




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