いつまでもよろしく 23:33 31 Dec 出来立ての蕎麦をお椀に盛り、こたつの上に並べる。 ぬくぬくとそれの中で温まっているヨハンは勢いよく、十代が持ってきた蕎麦に食いついた。 目を輝かせ、美味い美味いと言いながら夢中で食べる彼を見るのが十代にとって至福であった。 何よりヨハンは日本食が大好きなのである。 正月は日本で過ごすと彼に聞いてから、絶対に蕎麦をご馳走してやろうと決めていた。 結果、これ以上はないといったヨハンの喜び様を目の当たりにし、作ってよかったと十代は心から思った。 こたつから伝わる温もり以上に、その反応が十代をぽかぽかと温かい気持ちにさせた。 「んー美味しかった!ご馳走様!」 破顔して言うヨハンに、それはよかった、とつとめて冷静を装う。 年の最後に、でれっとした締まりのない顔を見せるのはどこか抵抗があった。 心の中では「ああヨハンかわいいまじかわいいありえない」と思っていながら、それを必死に隠す十代をヨハンは特に気にすることもなく、テレビをぼんやりと見つめていた。 画面に映っているのはバラエティー番組で、笑い声がひっきりなしに聞こえてくる。 十代は蕎麦を啜りながら、テレビに目を遣っていた。 ふ、とうっかり笑ってしまったところで、こたつでもなくまだ温かい蕎麦でもなく別の、それでいて自分のよく知る温もりを感じた。 「どうした?」 いつのまにか擦り寄ってきていたヨハンに心臓が飛び出そうになるが、ぐっとこらえた。 そんな十代の心境に全くといっていいほど気付かないヨハンは、十代の腰に手を回し、背中に顔を埋める。 「そうだなあ……」 ぽつりと呟かれたその言葉に、何がどうしたんだと突っ込みたくなるが、後ろから抱き付かれているという事実に身動きがとれない。 十代があわあわしていると、ようやくヨハンがもごもごと口を動かした。 「今年もよろしくお願い、し、ます……」 かくん、とヨハンの頭が背中を滑る。 ずるずると十代の身体にもたれたヨハンは、新年の挨拶を済ませてすやすやと眠りに落ちたらしい。 眠るヨハンをしばらく見つめたあと、時計を見るとすでに0時をまわっており、十代はがっくりと項垂れた。 どきどきして損した、と振り回されっぱなしの自分にため息を吐く。 「こちらこそ、よろしくな」 振り回されたお返しも含めて、十代はすやすや眠るその口にキスを落とした。 |