メリー・メリー
23:43 28 Dec



今日は部活が休みだから二度寝できる、と思ってのんびり布団に包まっていた。
いつも起きる時間に目が覚め、それからもう一度寝たら時計は十時を差していた。
そろそろ起きようかと考えていると、ピンポーン、と間延びしたチャイムの音が聞こえて、ようやく俺はベッドから立ち上がった。
誰が来たのか確認しようとモニターを覗くと、そこには見知った顔が映っていた。
慌てて「ちょっと待ってろ」と伝え、部屋にあった適当な服を着る。
寝起きでぼさぼさの髪を結い、大急ぎで玄関を開けると、訪問者は待ってましたと言わんばかりにずかずかと足を踏み入れた。

「メリークリスマス、先輩」

そう言って、狩屋は小さめの箱を差し出す。

「ああ、ありがとう」

受け取るときに触れた手は氷のように冷たかった。
そのうえ耳まで真っ赤にしていることに気付き、外は寒かっただろうと暖房の効いているリビングに通した。
箱の中身は苺のショートケーキが二個。
園のお姉さんが作ってくれたものらしい。
先輩と食べたくて、とごく自然に言うこの後輩は本当に恥ずかしい奴だと思う。
皿に移したケーキとコーヒーを出すと、狩屋はきょろきょろと辺りを見回した。

「誰もいないんですか?」
「出かけた」
「先輩はお留守番、と」
「そのとおり」

質問に答えると、狩屋は「せっかくのクリスマスなのに」と零した。
生クリームのたっぷりついたケーキをぱくぱくと口に入れ、興味深そうに「ふーん」と言う狩屋は、俺と目が合うとにんまり、綺麗な弧を作る。

「食べないんですか?」
「い、今食べる」

言えない、狩屋を見ていて手が止まっていた、なんて。
だって、あまりにも美味しそうに食べるから。
こうして見れば可愛い後輩なんだけどな、とか、思ってなんか、

「霧野先輩」

呼ばれると同時に顎を掴まれ、半ば強引に口を塞がれる。
ケーキを食べた狩屋の唇はとても甘くて、ともすれば酔ってしまいそうな感覚を覚えた。
最後に自分の唇をぺろりと舐めた狩屋は、まるで猫のようで。

「ね、美味しいでしょう」







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