君だけ
19:07 29 Oct



「特別、ってなんだろうな」

適当な雑誌を読んでいたヨハンは、ふと思いついたように言った。
デュエルアカデミアを卒業した後、それぞれの道を歩んだはずの俺達は今、いろいろあって一緒に住んでいた。
人と精霊の手助けをする旅はひとまずお休みにして、適当に働いて暮らしている。

「なんだよ、いきなり」

皿洗いを終えた俺は、ソファに座っているヨハンの隣にすり寄り、雑誌を覗き込んだ。
恋愛ものの特集らしく、ノロケ話がこれでもかというほど盛り込まれている。

「……ヨハン」
「なに、ん」

ちゅ、と軽く口付けると、ヨハンは抵抗の素振りを見せずに俺を受け入れる。

「お前は俺以外とこういうこと、したい?」

突然の言動に目を見開くヨハン。
すぐに首をぶんぶんと振った。

「んなわけないだろ」
「じゃ、俺だけなんだ?」
「ああ!!」

勢いよく肯定するその姿がなんとも愛おしい。
今すぐ抱き締めたい衝動を誤魔化すようにその額を指で軽く弾くと、ヨハンは素っ頓狂な声を上げた。

「そういうことだろ」
「……あ?」

額を押さえながら、ヨハンはぽかんと俺を見つめる。
翡翠色の瞳が、単調に俺を映していた。




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