……昔から、比較的我慢をする事には慣れていた筈だった。それなのに、最近のあたしはおかしい。前まで出来ていたその行動が何時の間にか出来なくなってた。我慢する事で、あたしの最後の砦は守られるのに。

たかが恋愛、されど恋愛。何時までも子供のままじゃいられないのは判っていた。それは日々の生活にしかり、恋愛にしかりの話。だからこのままじゃ駄目だ、そう思って立ち上がろうとした瞬間、第三者の声が聞こえて全身が硬直した。



「お客様、他のお客様のご迷惑になりますので」

「…っ!?」



各々で瞬間的にヤバいと感じて声がした方向に目をやった。だがそこに想像していた店員の姿はなく、変わりにあったのは悠太の姿だった。

どうやらあたし達が此処に居た事に気付いていたらしい。



「……あたし、帰る」

「じゃあオレも」

「悠太が帰るならオレも」



そう言うや否や、対角線に座っていた祐希が席を立った。何なんだこれは、最悪じゃないか。あたしは一人で帰りたいのに。こういう時に限って要りもしないおまけが2つも付いてくるなんて。

勿論あたしは望んでないし、望む筈が無かった。まあ良い、今日のあたしは徒歩じゃない。自転車なのだ。店から出たら一目散に自転車に乗って、さっさと行ってしまえば望んでいた一人になれる。



「……筈だったのに」

「何?」

「……別に」



店を出て、自転車に鍵を差し込んだところ迄は良かった。あとは乗るだけだったあたしの自転車に、何故か乗って居たのは祐希だった。我が物顔で「悠太はここ」なんて良いながら荷台をポンポンと叩いている。これは想定外の事だった。

思っていたように事が進まないせいで無性にイライラする。この双子の事だから、こうなる可能性が無い訳じゃなかった。それ故に要因の一つをスルーしてしまった分、結局は自業自得になるのかもしれない。けど、これはこれで腹が立つ。


2012/01/15


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