名前が俺を避けておる事に気付いたんは、名前が中学に入ってからやった。最初は思春期からのものだと思ってた。せやから俺達には余所余所しいのだと。

でも実際のところ避けられていたのは俺一人だ。俺の居ないところで、金造や廉造達とは楽しそうに会話しとる。その時は流石の俺かてショックで、暫く立ち直れんかった。



「何で御前は頼らんのや!そないに俺は頼られへんのか?」

「何でそないなるん?私は言いたない言うとるだけやん」

「普通、兄は頼るもんや!」

「うっさい、そないなこと知るか!ホンマ柔兄にはデリカシーってもんがあらへん。そんなん最低最悪のアホ兄貴やで」



そない状況化でまず思ったんが兄として何とかせな、という事。俺が頼りないから名前は俺に頼らんのや、と自分に都合の良いように言い聞かせた。そしてそれ以来、対した用もないんに名前を呼んでみたり、挨拶をしてみたり。だけど、あいつは用事を済ませるなり何処か行ってしまう。

その内容はどれも義務的で、それ以外の会話には一切返答すらせぇへん。そんな事もあってか、つい売り言葉に買い言葉。四捨五入したら三十路になるというに、俺も大人気ない。



「柔兄と名前姉が喧嘩しはるなんて珍しい事もあるもんやな。ここまで大きな喧嘩しはるの、初めてちゃうん?」

「そやな。初めてさかい、何でアイツがあんなに怒ってるんか全く判れへん」



俺かて短気なんは治さなアカンと思ってる。だけど、矯正したと思っていた其の短気も、突発的な事には未だに対応できておらへんようで、終いには手を出し掛ける始末。これじゃ、名前の言う通り最低な兄貴だ。

いや、兄貴としてだけでない。実の妹とは言え、女に手をあげようとしたんや。その時点で男としても最低や。



(20110522) 

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