なんて悲しい逢瀬なのでしょうか。確かに、私は小平太に会いたいと思っていた。でもそれは、今じゃない。血塗れた私を、あの真っ直ぐな瞳の中に映したくなかった。私は忍者でありながらも一人の女であった。七松小平太という男を好いていた女。

だからこそ好きな人の前では綺麗な私でありたかった。人を手に掛けた後に会いたくなど無かった。嗚呼、今すぐにでも消えてしまいたい。水面に浮かぶ泡沫のように静かに。誰の目にも止まらず、ひっそりと。



「名前が元気そうでなによりだ。こうして再会できた事、嬉しく思う」

「…私は貴方に会いたくなかった。こんな姿、見て欲しくなかった!」



視界が濁り、眼が熱を持つ。頬に流れ落ちていくこれは私の涙か。私は、泣いているのか。敵かもしれない小平太を目の前にしているというのに、さっきまでの警戒心は何処に消えたのかと自分自身に悪態をつく。いや“かもしれない”なんて言葉は嘘だ。戦場で会ってしまった。それはつまり、小平太は私の敵であるということ。

なんて悲しい結末なんだ。好いた人に殺されるか、好いた人を殺すか。選択肢は二つしかない。もしこの場で命取りをしなかったとしても、また何処かの戦場で会うかもしれない。でもね、確かにあの日々は幸せだったんだ。みんなと、貴方とあの学園で競い励ましあい学ぶことが出来て。嗚呼、なんでこんなにも胸が痛い、苦しいんだ。



「……正直言うと、わたしもここで名前に会いたく無かったのだ」

「……小平太」

「でも逢ってしまった。それが嬉しい反面、辛くもある」



一歩、また一歩と小平太が私に近付く。こっちに来るな、と言いたいのに声にならない声が二酸化炭素として漏れ出した。




2013/09/14


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