あれから各々演習の準備に取り掛かるため私達は一時解散し、部屋に戻るなり演習の準備に取り掛かっていた。あの演習から一年、私はあの時よりも実力をつけた。これは自惚れでは無く結果論だ。女は足手まといだと言われないために血の滲むような努力を重ね、泥まみれの汗まみれになりながら我武者羅なまでに授業に打ち込んできた。その時間の数だけ自分が成長した、頑張ってきたという証明になる。

武具を整理し、演習の準備を終えた私は、逸る気持ちを抑えきれず一足先に予め指定されていた集合場所へと赴いた。するとそこには兵助と勘右衛門の二人が何時ものように談話している。そんな彼等を遠目から見つめていると、私の視線に気付いた勘右衛門がふわりと笑いながら手を振ってくれた。



「兵助も勘右衛門も早いね」

「そう?普通だと思うけど」


他愛の無い会話を三人で繰り広げていると八左ヱ門、雷蔵それから鉢屋がやってきた。始めはくのたまの自分が忍たまと馴れ合うことに少しばかり抵抗あったと言うのに、今ではここが私にとって落ち着ける居場所となってしまったのだから慣れとは怖いものだ。それから間もなくして生徒が集まったのを見計らってか先生方が集まった。そして改めて演習の流れを聞かされる。

演習内容は兵助から聞いた通りだったので心持ち余裕があった。…が、問題は班分けだ。組む相手によっては自分の立ち位置が変わってしまうこともあって神頼みせずにはいられない。個人的には兵助か八左ヱ門と組みたいところだけど、きっと私の望み通りにはならないだろう。だがそう簡単に望みを諦めることも出来ず、私は少しの希望を胸に発表を待っていた。そうして待ちに待った班分け。今回も以前と同様に先生方が決めているらしく次々に生徒たちの名前が呼ばれていった。



「次、久々知兵助。竹谷八左ヱ門」

「はい」

「はい!」


五年生にもなるとくのたまの数も更に減少し、気付けば片手で数えられる程度。其れゆえに女子は少なく殆どのペアは忍たま同士となっていて、稀に忍たまとくのたまの男女ペアが出来上がる。忍者になるたくて学園に入ってくる私のような女よりも、行儀見習いとして学園に足を踏み入れている子達が多い故に仕方の無いことなんだけど。

そんなことを考えていると兵助と八左ヱ門が名前を呼ばれていた。見知った者同士で組めるということがとても羨ましく思う。次に呼ばれたのは勘右衛門で、勘右衛門はろ組の子とペアのようだ。人見知りをするほうではないが、出来れば見知った人間のほうがいいと思う。私は羨ましいと一人小言をはきながら、まだ名前を呼ばれていない雷蔵と組めるかもしれないという期待を胸に抱かずに入られなかった。



「次、鉢屋三郎。苗字名前」

「はい」

「…はい」



その結果、これだ。私は雷蔵とが良かったというのに、よりにもよって鉢屋とだなんて!これは不運にも程がある。それにしても何時から私は不運に見舞われるようになったのだろうか。ひょんな事をきっかけに善法寺伊作先輩と関わりはあっても、食満留三郎先輩のように善法寺先輩からの不運を講じたことは今まで一度も無かったんだ。

そうだ、やはり鉢屋に出会ってしまったことが不運の始まりだと一人頭の中で意識を右往左往させていると不意に背後から肩を掴まれた。



「今日の演習、宜しくな」






そこにいたのは雷蔵の顔を模した鉢屋だった。


嗚呼、今日はなんて厄日だ。



2013/09/29


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