今日は早朝からクラスマッチの練習が行われるという事で、何時もより早く学校へ向かっていた。途中までは翔と他愛ない会話をしながら自転車を押しながら歩いていたのだが、翔はコンビニに寄ると言って学校手前で別れたので今は私一人だけ。

学校に着いて、乗ってきた自転車を指定された場所に止める。不意に見上げた空は、オレンジと青がまばらに混ざっていて不思議な色をしていた。その不安定な朝焼けの色は私の気分を憂鬱にさせる。



「4組集合ー!始めるよー!」

「あ、今行くー」



何時ものように自分の教室に行って荷物を置き、それから私は更衣室で体操服に着替えてから体育館に行った。クラスマッチの練習と行っても軽いもので、男女隔てなく一部のメンバーがバスケの練習試合をしているだけ。

かく言う私は春湖と一緒に男子に混ざってバスケをしている。前方にパスコースを失った私は、近くにいた味方の瀬々に声掛けをしてパスを出したのだが、そのボールは何故か皆見の後頭部に激突。ドスッという嫌な音がした瞬間、一気に体育館内がしらけてしまった。



「ごめん皆見!頭大丈夫だった!?」

「あー、うん。多分」

「ねーこのカバン誰のー?さっきバキッつったよー」

「えー俺のだったらどうしよー」

「あー中身が、ほんとごめん!」



皆見には今一度謝罪の言葉を告げ、足早にカバンの方へ足を向けた。もし何か壊れてしまってたら弁償しなきゃならないと思ったからだ。みんなが集まる其処にあったのは散乱したカバンの中身と、どこにでもあるような普通のノートが一冊。

何の変哲も無いそのノートの中を、私は瀬々越しに垣間見る事が出来た。ほんの少しの好奇心が今後の日常を変えてしまうとはこの時、誰も思いもしなかったのだ。





「…知らない文字だな。これって誰のノート?」

「あー確か、これ」



そこに書かれていた文字は、私も見たことがある文字だった。これはあの夢で見る世界の文字。それがここに記されているという事はつまり、私以外にもあの夢をを見て、あの世界での記憶を持つ人間が居るということだ。

うっすらと見える文字の羅列を追うと、そこには古い髪、古い爪、古い血と言った供物の種類が書き出されていた。他には基礎的な魔法や、組み合わせの間違った魔法ばかりで特定の人物を導き出すには物足りない。もっと、もっと特徴的な何かが書いてあれば…。



「皆見ー!これ御前のー?」

「あ、ああ。そー俺の。読みたい本があって、今タミル語の勉強してるんだよ」

「…これ、皆見のなの?」

「どうかしたのか?田端」

「あ、いや…何でもない」



さっきの皆見は少し様子がおかしかった。だから多分、皆見はビンゴ。私と同じようにあの世界の記憶を持っているのではないか。これはもう確信に近かった。

あの後、私達はクラスマッチの練習を切り上げて学生らしく授業に励んだ。その間も考えるのは皆見の事ばかり。皆見の前世は一体誰なのか、それだけが気になって仕方なかった。



「よし!ではクラスマッチ優勝に向けて、明日の朝も1年4組頑張るぞー!」

「おー!!!」

「えりか、やけにやる気ね」

「まーね。やるからには優勝しなきゃ!」



気付けば放課後の練習も終わっていた。窓の外は真っ暗で、薄暗い廊下は少し不気味な雰囲気が漂っていた。私は皆よりも一足先に着替えを終え、一人でトイレに行っていた。

この不気味さでは何か起きてもおかしくは無いなーなんて思いながら不意に向かい廊下の窓に視線を向ける。そこに違和感を感じた瞬間、突然向かい廊下の辺り一面発光し、光が消えた。私が、あれを見間違える筈はない。だってあれは、あの世界の魔法と同じだ。ずっと、見てきたんだ。あの、夢の中で。



(20110222)


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