ソフトワックスじゃ上手くポリシーを固めらなかったようで、結局ご機嫌斜めな琥一くんを連れてきたのは買い物客やら観光客やらでごった返す上野駅。アメ横の人混みの中、流れに沿ってしばらく歩いて暗い細い路地を曲がればその店はあった。

朝会ったばっかりの親友の店。正直洋服に関しては、流行り任せな私にポリシーやこだわりなんてものは一切無い。

流行りなんて無縁の、趣味に偏ったこの店に来るのは片手で数えられる程度。扉を開けると古着屋独特の臭いが充満していた。


「・・・悪くねぇな。」


「そう?」


私にはただ古いだけの服にしか見えないけど?


店に入るなり少しだけ機嫌を戻し、足取り軽く辺りを物色し始める様子を余所にレジへと向かえば、朝見たばかりの親友が大きな目をパチクリさせながら人の顔を二度見した。

カウンターに隠れた死角には返したばかりの漫画達。


「めっずらしっ!!どうしたの?何か急用?」


「いや、知り合いが服見たいって言うから。」


後ろ指差す先には先週ファミレスで一晩中盛り上がった実写版王子様。もしかしたら思い出す?なんて淡い期待は一瞬で消えた。


「なーにー?あのイケメンは。・・・えっ!昨日の今日でまさかもう次とか!?はな、超やるじゃん!」


間違ってはいないような、でも合ってはないような気もして、何となく
「違う、」と弁解してみる。


「まさか、アレが例の二次元の王子ってやつ?いやー確かに勘違いしそうないいオトコだけどさぁ・・・ありゃ間違いなく三次元だ。現実に戻ってこいっ。」


やっぱり忘れてる。試しに琉夏くんの名前を出してみたら、「琉夏くんに兄はいない」と。

ある意味やってみたいよ。琥一くんがいないGS。琉夏くん大暴れなんだろうなぁ・・・かなり大変だ。


「おい、はな。」


呼ばれて振り返れば数枚の服を手に現れた王子様。その姿に先に食い付いたのは親友の方だった。


「呼び捨て、ねぇ・・・?ふーん・・・。」


「何だよこのピアス女。」


両耳に二桁はあるだろうピアスの列をしかめっ面で見ながら人に解説を求める。


「小学校ん時からの親友でこの店のオーナー。愛想良くしてたら値引いてくれるかもよ。」


「ふーん」と然程興味無さそうに手元の服をカウンターに並べるとその服を見ながら興味深々な親友が琥一くんに噛み付いた。


「お兄さん、趣味いいね。見る目あんじゃん。」


私にはわからないけど、どうやらそれは選んだ服に対しての感想らしい。しかもお兄さんって・・・確かに十代には見えないけど。

そんな言葉を相手にせず、さっさか財布をジーンズから取り出すと見たことのない紙を取り出す琥一くんにギョッとして、無理矢理その手を止めた。





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