来週の月曜には帰りたいらしい。おとぎ話みたいに魔法でも切れちゃうから?と聞いたら「バイト休めねぇんだよ、1週間分しか家に食料がねぇから琉夏も死ぬな。」と妙に現実的な理由が返ってきた。



頼むよ神様。



もう少し夢のような夢を見させて頂けませんでしょうか?ちょいちょい交じる現実が私の頭を冷静にさせてくる。甘い夢にだけ陶酔出来ればいくらでもバカになれるのに。


「オマエ・・・普段から飲み物はアルコール、とか言わねぇよな?」


ガチャリと断りもなく開けた冷蔵庫。この家にアルコール以外の飲物がない事に手早く洗い物を済ませてた王子様は文句言う。


「今日はたまたま切らしてんの!」


昨日飲み干したミネラルウォーターがラストだったらしい。食べ物が無くても宅配で何とか出来るけど、飲み物がないのはちょっとキツいかな。

東京の水は美味しい!なんてCMやってたけど、隅田川のあの汚れっぷりを見た後に水道水を直接飲みたいなんて思う人は多分いないでしょ?

天気も悪くないし・・・しょうがないと買い物に行くことを提案する。


「ほら、これ着て?ちょっと小さいかもしれないけど11月じゃタンクトップ一枚は無理。」


ぽいと投げたのは、アイツの置き土産のジャージ。外出にも使えるお洒落なデザインなのに、露骨にすごい嫌な顔された。そうだ、この王子様は服に絶大なポリシー持ちだった。


「嫌?嫌なら着なくてもいいけど、外寒いよ?」


ちっと舌打ち渋々ジャージを羽織る。意外と似合うと思うんだけど。いや、眉間にシワさえいれなければ、背も高くて手足も長くってモデルみたいなのに色々勿体ない。


「近くに服屋ねぇのか?
ンなんじゃ出かける気も起きねぇ・・・おい、ひとっ走り買ってこいよ。」


うわ、仮にも年上だってのにこの態度。
しかもぱしらせる気?

アッチから持ってこれないのか聞いてみたけど、そんなこと出来る訳ねぇだろと一喝。いやいや、出来る訳ないとこから来たあなたに言われるとかなり複雑なんですが。


「どーせしばらくいるんだし、近くに友達がやってる古着屋があるから行く?」


「距離は?」


「電車で二駅。駅からはすぐ近く。」


電車と聞いてみるみるまた眉間に力が入った。服が嫌なのは十分理解。それに、新たに追加されたくしゃくしゃっと頭を掻く仕草・・・それを見て何となーく心情理解。


「ワックスなら洗面所にあるから勝手に使っちゃっていいからね。」






アレももう不要の産物だ。





back | next | list




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -