『いらっしゃいませ!』
「ああ、いつものを頼んだ。」
『かしこまりました。』


ふふ、と笑ってそう言った。
そんな彼女に、俺は小さく言う。


「……なあ、」
『はい?』
「今日……仕事が終わったら、どこかへ行かないか?」
『へ…?』
「お前と、もっといろんな話がしたい。」


1年後。

俺達は、あれから数週間の時を経て付き合うことになった。

前世でもこういった関係をお互い持っていたわけで、正直複雑な気分だが、好きになってしまったものは仕方ないし、彼女も俺を好きだと言ってくれた。

すごく居心地がいいこの関係がとても気に入っているし、彼女と居る時間がいつの間にか当たり前になっていて。

俺は、隣で笑ってくれるなまえが何よりも大切だった。


『今日はもうすぐお仕事終わるので、喜んで!どこへ行きましょうか?』
「いいのか?」
『はい、私も今朝…リヴァイさんとお話したいと思ってましたから。』


照れくさそうに笑って、そう言う。
そんな彼女がどうしようもなく愛しくて、俺はなまえの手をとってそっと指を絡めた。


『!り、リヴァイさ……』
「今日は、遊園地にでも行こう。お前行きたがってただろう?」
『はい、まあ……』
「夜の遊園地ってのも悪くねぇだろ。今日は遊ぶぞ。」
『はいっ!』


ふんわりと微笑むいつも通りの彼女に笑い返し、コーヒーを受けとって、いつも通りの席に座る。
今日は、夜まであいつと一緒か…。
そんなことを考えて、少しだけ笑う。すごく、すごく幸せだと感じた。

…そういえば、あの夢の娘が言っていたな。


「……巨人なんかいない、壁もない、たくさんの人が幸せだと言って笑えるような世界で…」




″──私はまた、貴方と出会いたいです″




「また出会う、か……」



ふと、ガラス窓越しに見える都会の景色を見つめながら思う。




今の世界は、どうだろうか。



巨人なんてのは居ない、

壁は、どんな壁を言っているんだろうか?……でも、きっと彼女が言うその壁もないだろう。

だいたいの人は幸せだと言って笑っているし、



お前と俺は、
またこうして出会えた。



『リヴァイさん!』



私服に着替えた彼女がレースやらフリルやらのあしらわれた可愛らしいスカートを揺らしながら笑顔で走ってくる。そんな彼女の姿を確認して、コーヒーを飲み干した。


「──、行くか。」
『はいっ!』



隣で嬉しそうに笑うこいつを、俺は一生愛し抜きたいと思っている。
前世での俺とお前が出来なかったことを、やりたかったであろうことを、少しずつ時間をかけて、積み重ねていこう。



「なあ、」
『はい?』

「運命って、あるもんだな。」



そう俺が言えば、彼女は目を見開いて少ししてから、可愛らしく微笑んで言った。




『はい、運命はちゃんとあります。
でも、その運命を作るのは……きっと、自分たちをそうさせる強い想いなんでしょうね。』

「強い、想い……。」


『ねえリヴァイさん。』

「?」



『あの時の私たちの分まで、私たち幸せになれますかね?』




そう言って俺の顔を覗き込む彼女を見て、フッと笑う。



「──さあな。」



俺はポケットにしまわれた、指輪の入っている小さな箱をそっと指で撫でながら笑ってそう言った。


俺達は、強い想いで結ばれたあの日の二人。……彼らの分まで絶対に幸せになると約束しよう。






もう一度、
こうして君と巡り逢えたのだから。






end.


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