「?それだけでいいのか。」
『はい!』


なんだか拍子抜けした。
市街地に行きたいって、まあそりゃあ行く機会なんてのも訓練兵ならなかなか無かったんだろうが…。


「何か、買いたいものでもあるのか?」
『あ、いえ…そうじゃなくて……』


頬を染めて、はにかんで。
その細くて白いしなやかな指を、照れくさそうに組む。


『リヴァイさんと、二人でデートに行きたいなぁ、なんて…。』
「…!!!」



前言撤回。

俺は拍子抜けどころか、心臓を撃ち抜かれたような衝撃と歓喜に見舞われた。













***












ー…



『わあ、すごい!』


ふわりとスカートを揺らしてなまえが小走りにはしゃぐ。

……いつぶりだろうか、こんなの。
私服で二人で、外出なんて。



『───リヴァイさん?』


その声にはっとして顔を上げる。


『体調が優れませんか?』
「……いや、そんなことはない。…行くぞ。」


彼女の手を握って、歩き出す。
…せっかくの休みで、こいつと一緒に居られるんだ。もっと楽しもう。


「なんだか懐かしいな。」
『え?』
「お前とこうして、二人で外を歩くなんて。」
『…そう、ですね。』


なまえが、優しく笑った。

…周りから聞こえる賑やかな人の声が、彼女の世界であった、″ショッピングモール″とやらに行った時と重なる。

鮮明に思い出されるその記憶と、まだあどけなかったなまえの笑顔が甦った。


『リヴァイさん、見てくださいあれ!犬です犬!!!!』


きゃあきゃあと小さく悲鳴を上げながら、子供のようにはしゃぐ。性格は全くと言っていいほどそのままだが、その横顔は、もうすっかり20歳だった。


「お前、綺麗に育ったな。」
『え…』


その真っ白い滑らかな頬を撫でると、仄かに熱を帯びていくのが分かる。証拠として、彼女の頬は真っ赤だった。


『そ、そんなことないです…背とか、小さいままだし…』
「小さくていい。そのままのお前が、俺は好きなんだからな。」


真っ直ぐに見つめて言うと、彼女は少し目を伏せて、唇をきゅっと結んだ。


『リヴァイさんのばか。』
「!」


抱き締められて、小さな声で。



『大好きです、』



そう言った。







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