幸福への翼 | ナノ


▽ 貴方を想う帰り道



『さあエレンくん、水着好きなの選んでいいよ!』


昼過ぎ、私たちは明日プールへ行くべく水着を買いに来ていた。ここは水着専門の大型店だから、気に入るものが見つかると思う。


「はい!……、あの…」
『ん?』
「そ、その…エレンくん呼びやめませんか…?」
『え?』
「ああ、いや……その、エレンって、呼んでほしいな…なんて。」


年下だし、とはにかむエレンくん。
可愛い笑顔だなあ、眩しいや。


『じゃあ、エレンって呼ぶね!』
「は…はいっ!」
『私のことも、呼び捨てでいいよ?5つしか変わらないし、敬語もいらない!』
「でも…いいんですか?」
『うん。その方が嬉しい!』


駄目かな?と言うと、エレンは首を横に振った。


「ロ…ロシェリー…」


顔を真っ赤にしながらそう言うエレンが可愛くて、つい笑ってしまった。


『エレン。』


笑ってそう言うと、エレンはまた顔を赤らめて、俯いた。エレンは意外と恥ずかしがりやさんなのかな?なんて思いながら水着を見ていく。


「ロ、ロシェリーっ」
『ん?なあに?』
「俺、どんなのがいいかよく分からないん…だけど、一緒に選んでもらえるか…?」
『いいよ!』
「俺のは後でいいから、先に選んじゃえよ。」
『そう?じゃあお先に…』


うーん、可愛いのはたくさんあるけれど…どれがいいのかな?


「何かお探しですか?」
『あ、はい…どれがいいか考えてまして。』
「それではお似合いのものをお探し致します。こちらへどうぞ。」
『どうもありがとうございます!』


店員さんと色々話しながら選んでいく。そして最終的に選び抜かれたのは、白の可愛らしいビキニと、黒のワンピース。迷うなあ…。


『ねえエレン!どっちがいいかな?』
「え、お、俺!?」
『どっちが似合うと思う?』


エレンは顔を赤らめながら、「そ、そっち…」と、ビキニを選んだ。うん、やっぱりこれ可愛いよね!


『じゃあこれにする!』


店員さんにお礼を言って、エレンのものも選んでいく。私は男の子のものはよくわからないというのが本音だけれど、店員さんがすすめてくれたものは私もとても気に入ったし、エレンも気に入った様子。


「俺、これがいい!」
『うん、似合うと思う!よし、じゃあ買ってくるね!』


二人分の水着、それから上に羽織る薄いパーカーを買って、ゆっくり帰ることにした。


ー…


「……えっと、ロシェリー。」
『ん?』
「明日、楽しみだな!」


へへ、と少し照れくさそうに笑うエレンに、私も笑い返す。夕日に照らし出されたその笑顔は、とてもあどけない笑みだった。


『うん、そうだね!』


夕暮れの中を、あの人ともこうして歩いた。二人で肩を並べて。…胸元に光る右翼を見つめ、そっと思う。


リヴァイさんに、会いたい。



もちろん、エレンが居る今寂しいと思う暇がないくらいに毎日は楽しい。……けれど、それはリヴァイさんと過ごしたあの21日間とはまた違った楽しさなわけで。

あの21日間が、
とても懐かしく、恋しく思えた。



ねえ、リヴァイさん。

私は今でも貴方をこうして想っているように、貴方は私を思い出してくれているのですか?

私がこうして見上げている空を、貴方も見上げているのですか?



お願い神様、

どうか、どうか、
もう一度だけ…リヴァイさんを抱き締めたい。彼のあの不器用で優しい温もりを、感じたい。


少しだけ、
視界が滲んだ帰り道だった。



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