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なとなと(初盤)

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今さらですが、当編は、元祖の復刻版です。データをざざっと移植、修正加筆しました。

(ベタな流れにしよう!
と、捻りも何もありません)
少しキャラが違うのは、設定をそのとき特に考えてなかったということです。

第2章 : 祭と桑


「警察に……」
立ち上がるぼくを桑指さんが止めた。

「申し訳ございませんが、お嬢様が亡くなられるときに、隣にいたのはあなたがたです。疑いをかけるのをお許しください……もし犯人だったとしたら、そのまま逃がしてしまうことになります。それに外は厳重なセキュリティがありますので、一度中に入ると、家族登録されている方の承認が必要になります。私でさえも、その……」

「ぼくは犯人じゃありません、そんなわけ……ぼくは、緋田さんと、初めて会ったっていうのに、どこにそんな動機が」

「違うよ、なとなとは違う。ずっと一緒にいたし。それに、醤油を付けたのは、エックだけなんだよ」

そう言ってからまつりは暗い顔をした。いつの間にか震えが収まっている。

「そういえば、醤油の場所を訪ねたのはあなたでしたが」

桑指さんは冷たい目をしていた。ぼくはいらいらしていた。なんで、一体なんで、こんなことに巻き込まれているんだ……

「こいつは、そんなことをしないよ」

疑ってはだめだ。疑ってはだめだ。疑ってはだめだ。疑ってはだめだ。まつりを疑ったとき、ぼくがぼくでなくなってしまう。あいつは、そんなことをしない、するわけがない。

「桑指さんだって、怪しいじゃないか」

ぼくはそんな台詞を吐きながら、ひどく情けなくて、滑稽な気分になりそうだった。自虐的とも言えるかもしれない。一体なんで、こんなところでお互いを疑い合ってるんだろう。


「毒が入っているのを知っていて、あえて持って来させたんだ……いや、別に、緋田さんでも良かったんだ。
まつりは醤油をかけないからな。ぼくが醤油をかけるかには考慮出来なかった。ぼくが来ることは聞いていなかったんだろうし」


「まってください、私はただ、折角なのでなにか作ろうと。火を使っていたので手が離せなかっただけで」

「落ち着いてよ」

まつりが叫んだ。びっくりして視線を合わせる。声は低く、少し揺れていた。

「も、申し訳ありません。つい、動揺してしまいました」

「あーあ。電話するしかないか。っていっても、携帯も持って来てないし」

「桑指さんは携帯電話とか」
「すみません」

それが持ってないという意味だとわかると、ため息をつきたくなった。ぼくも持っていない。全滅だ。

なにか連絡が取れる方法はないのだろうか。

そういえば、この家の電話は?

聞くと、桑指さんは悩むような顔をした。

「じ……実は今朝、連絡が必要な用事で、電話を使おうと思ったのですが、どこを探してもそのとき既に三台全てがなくなっておりまして」

「本当?」

「本当です。無駄に問題を起こさぬようにと、私は何も申し上げておりませんでしたが」

やっぱり、連絡をとれないらしい。

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