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5.palihgenesis [ 14/124 ]

 諦める方がいいだろうかと思う。
なぜだか、うまくいかない。
というより、それにすがっているのか。
怖いのは、たぶん間違いじゃない。

優しい顔で近づいてきた他人だって、やがて豹変するかもしれない。
どこかに売り飛ばすのかも。
何をどう信じろというのだろう。
何も、どうも、信じられない。

 船の汽笛が聞こえる。そばで藍鶴が海の映像をじっと見ているが、何か楽しいのだろうか?

「懐かしいよ」

船は、俺は、好きじゃないが。

「きれいだな、海は」

そうだろうか。
死者の声に、埋もれそうになる場所だ。

いつも、なにかに追いかけられ、声を聞き、もがくしかできない。
どうすれば解放されるかなど、俺にもわからない。
抱き締められて抱き返した身体は少し、震えていた。テレビの画面に、海が映っている。
そいつは、どんな気分で観ているのだろう。
その蒼に何を、重ねているのだろう。

「……と、を、……て」

「なに?」

眠くなったのか、腕にぎゅうっと引っ付いてくる。そのままにしていたら、そいつは、そのまま目を閉じて寝息をたて始めた。
目の端からは、ゆっくりと涙が流れていた。
聞こえはしない何かを呟いていた。



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