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慌てて鈴から目を逸らす。ただでさえ狭い空間に二人きりだというのに、その行動はヤバい。俺は何も見てないぞ。腰がすっげぇ細くてくびれていたなんて少しも見てないからな。


「あ。悪い、弟感覚で着替えちゃった」


お と う と 感覚だと!?
くそう、何ていい思いをしてるんだ鈴の弟め。ってそうじゃない!俺は弟感覚だったのか?取りあえず、この部屋を出ていこう。それがいい。


「じ、じゃあ俺は出ていくから、着替えたら言って」

「うん」


俺は鈴の方を見ないようにして扉を開けて、部屋を出た。
危うく自制心がなくなる所だった。鈴は時々、女としての意識がなくなるからどう対処すればいいのか分からない。

その無意識が男心をくすぐるなんて、鈴はこれっぽっちも思っていないんだろうな。他の男にはそうさせないように、見張っておかなければ。

別に束縛って意味じゃないからな。他の男に誤解されたら後々面倒だからな。鈴はもう俺のものなんだし。ってさっきから誰に説明してんだよ、俺。


「着替えたー」


鈴の声が聞こえたので、扉を開けて部屋に入る。
やっぱりと言うか予想通りと言うか、水色のふわふわしたワンピースはとても鈴に似合っていた。

かわいい。かわいすぎる。恥ずかしそうに控えめに微笑む鈴は、最高にかわいい。


「どうかな?」

「かわいい」


俺は堪らず鈴を抱きしめた。多分、鈴は驚いているだろう。鈴の匂いがする。この匂いも俺は好きだ。これだけじゃない。
俺は、鈴の全てが好きなんだ。


「ごめん。こんな奴で。全然可愛くない女で。けど、慶馬が……好き、だよ」


俺だけずっと鈴に好きだって言っても、鈴は俺を好きとは言ってくれなかった。最初はきっと俺なんか好きではなかっただろうし、男ということ自体、あまり好きじゃなかったと思う。

それが今、俺を好きと言ってくれた。好きな人に“好き”と言われることがこんなにも嬉しいことだったなんて、俺は知らなかった。


「俺も鈴が好きだ」


そう囁いて、鈴の唇に触れた。少し湿っていて柔らかい感触。そして、ほんのり甘い味。ほんの数秒間だけ、唇に触れた。


「うあー……。やっぱ無理。もう無理」

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