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遂に鈴を俺の家に招待した。決して下心はない。家族は丁度旅行へ行っているが。いや!わざと狙って誘ったんじゃない!

元々今日呼ぶつもりで約束していたんだ!そしたら急に親が「慶馬、旅行行ってくるから留守番よろしくね!」って語尾に星をつけるような言い方で、出ていったんだ!

まぁ、姉貴も竜哉もいない方が平和だから有難い。あ、竜哉ってのは俺の弟。って誰に説明してんだ?
ちなみに鈴に家族が今日は帰って来ないと言っていない。言ったら、下心があるって絶対に思われるだろ。


「お邪魔しまーす」


ご丁寧に誰もいない家に挨拶する鈴。今日の鈴もスタイリッシュな感じでカッコイイ。カバンが少し大きい気がするけど、そこまで気にすることじゃない。


「俺の部屋、二階だから」

「うん。っと、きゃっ」


段差につまずいて転びそうになった所を、俺は抱き止めた。良かった、鈴が怪我しなくて。
改めて抱きしめると鈴って柔らかくて、小さいんだなー。やべ、ドキドキしてきた。


「あ、ありがとう」


鈴がほのかに頬を赤らめて俺から離れる。これは、いい雰囲気じゃないの?と思っていたら、すたすたと階段を登っている。うん、それが鈴ですもんね。

俺の部屋は男の割に片付いている方。広い一軒家だから竜哉と共有ではない。俺の部屋と別に竜哉の部屋がある。

ベッドとテレビと机。漫画がたくさん詰まった本棚も置いてある。扉の近くにクローゼットもある。鈴はキョロキョロと観察した後、部屋の隅にちょこんと座った。

うわ、何かいつもの鈴が小動物に見える……!抑えろ、俺。焦って勢いに任せたら、何もかもが水の泡になるぞ。


「慶馬」

「な、何?」

「──これ」


大きなカバンから出てきたのは、この間見た水色のふわふわしたワンピース。直感で鈴に絶対に似合うと思っていた服が、何故こんなところに?


「慶馬がずっと見てたから、安かったし買ってみたんだ。今日着てこようと思ったんだけど、こんな女の子らしい服なんてずっと着てないから何か勇気出なくて‥‥。今、着てみていいかな?」


俺は即座にうんうんと何度も頷いた。すっげぇ嬉しい。鈴のこういう所が好きだ。素っ気ないけど、優しい。人の気持ちをよく考えてくれるんだ。俺はかなりの幸せ者です!

鈴は立ち上がって、上の服を脱ごうとしている。
ま、待てぇええい!俺の目の前で着替えるとか!ちょっと!俺の気持ち考えて!

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