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学校で視線が合うとすぐ逸らされるし、一緒に帰ろうと誘えばすぐに断るし、さりげなく手を繋ごうとすれば大袈裟に避けられるし……。

本当に、何でこんな奴を好きになったんだろう。未だにキスもしてないから、流石に俺も欲求不満だ。いい雰囲気になると、鈴は絶対ごまかす。

今日は何度目になるか分からないデートだ。デートはちゃんとしてくれるので、そこは素直に嬉しい。相変わらず鈴はボーイッシュな服装だが、嫌いではない。

そりゃあ、カジュアルな可愛らしい服を着てほしいのも本音。もしそのような服装だったら……、お持ち帰り決定だ。普通に帰してやらない。


「慶馬、一体何をニヤついてる。まさか、やっとウチを諦めるようになったのか!?よし、存分に浮気をするがよい!」

「おい、何キャラだよ。いいか?今度それ言ったら本気で怒るぞ?俺は鈴がいいって言ってんだろ」


普通の彼氏彼女だったら、彼女は恥ずかしそうにするだろう。実際、俺も恥ずかしいのだが。だって、お前一筋だって言われたら恥ずかしくなるもんだろ?

鈴の場合は違う。早く他の女を好きになれと急かすのだ。何でそこまで女にこだわるんだ。あれか、巷で噂のレズビアンってやつか。


「……ごめん」


珍しく素直に謝るものだから、驚いた。その時の俺は、間抜けな顔をしていたかもしれない。

俺らの横を仲むつまじいカップルが腕を絡ませながら歩いていく。その様子を鈴は見ていた。すぐに視線を移して、店を見ていたけど。


「何か、買うものあったんじゃないの?見ていこうよ」


以前よりくだけた口調。それだけで嬉しくなる俺は安上がりなのか?この先を期待するのは贅沢なのかもしれない。取りあえず今は、ショッピングを楽しもう。

いろんな店を見ながら鈴と歩く。鈴の歩幅に合わせながら歩いていく。いつもながら手は繋がせてくれない。そこでピタと足を止めた。水色のふわふわしたワンピース。これは絶対に鈴に似合うと直感で思った。


「どうした?」


鈴が不思議そうに声をかける。俺の視線の先にあるものを追って見つめた。
鈴はどうも女っぽいものが嫌いらしい。だから着てくれるはずがない。

勝手に俺の中でそう決めつけて、何でもないと答えると、再び歩き出した。鈴がしばらく見ていたような気がするが、俺は気にならなかった。

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