4/13 揃って声が上がる。直ちに無言で二人は立ち上がって歩き出す。真紀や秀の教室があるのは四階。そして今いる場所は二階。 間に合ったと思ったのに遅刻……。 三階へ上がった時には、チャイムは鳴り終わっていた。 とぼとぼと教室に入る。教卓に先生が……いない! やったラッキーと思いながら席へ着いた。 清水くんは今頃生徒指導室へ行っているのかな。 はぁぁー今日は心臓に良くない日だ。 真紀は秀のことが好きだった。三年生に進級し、クラス替えで離れてしまい、姿を見ることがなくなってしまった。 元々真紀と秀は話したことがなく、唯のクラスメートで真紀の一方的な片想い。 それが今日、とても近い距離でしかも少しだけ話せれた。それだけで嬉しくなり、一人で盛り上がっていた。 私がどんなに恋を求めても 恋は私から退いていく だから必要以上に求めない その感情が 自然消滅するのを待っている 私には感情なんていらない こんな── 感情なんて相手にとっては迷惑なだけだ * 「ねむ‥‥」 秀は小さく欠伸をして廊下を歩く。虚ろな目で歩いていたので、ガンと掃除道具箱に当たってしまった。幸い、辺りに人がいなかったので恥ずかしい思いはしなかったのだが……。 「あははっ」 近くを歩いていた女子が笑う。顔を見てみると、今朝会った西沢真紀であった。 知っている人に見られたので恥ずかしくなり、外方向く。それから足早にその場を去ろうとした。 「あ、待って」 呼び止められて足を止める。真紀の手には携帯があった。おおよそ察しがついた。 「メアド教えてもらってもいいかな」 「……いいよ」 秀が微笑んで見せると真紀も微笑んだ。ポケットから自分の携帯を取り出そうとした時、何かが落ちた。 「これは……」 床に落ちた物を拾い上げる。それは薄い桃色を帯びた桜の花弁だった。じっと秀を見詰めて真紀は言う。 「──昨日、いた──?」 [しおりを挟む] [mokuji] |