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神谷卓斗は学校が終わってから必ずと言っていいほど、海に来ていた。
透き通る蒼い海。色鮮やかな魚や植物。
卓斗しか知らないはずだった。

今日も同じように海を見に来ていた。しかし今日は1つだけ違うものがある。

人がいるのだ。

卓斗はその人に気付くようにわざと音を立てて歩いた。案の定その人は卓斗がいることに気付いた。


「誰だお前は」

「……栗原紫音。君は」

「卓斗。──神谷卓斗だ」


木陰に座っている紫音は再び海を見ていた。華奢な体つきの少女だ。紫音から少し離れた所に卓斗が座る。白い砂浜に鞄を置く。


「どうしてここにいる」


その言葉を聞くと紫音は膝を抱えた。


「分からない」


彼女をよく見てみると小刻みに震えていた。それに波が押し寄せてくる度、怯えている。

卓斗はそれを不思議に思った。


「お前‥‥海が怖いのか?」

「そう。綺麗────なのに怖い」

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