2/5 神谷卓斗は学校が終わってから必ずと言っていいほど、海に来ていた。 透き通る蒼い海。色鮮やかな魚や植物。 卓斗しか知らないはずだった。 今日も同じように海を見に来ていた。しかし今日は1つだけ違うものがある。 人がいるのだ。 卓斗はその人に気付くようにわざと音を立てて歩いた。案の定その人は卓斗がいることに気付いた。 「誰だお前は」 「……栗原紫音。君は」 「卓斗。──神谷卓斗だ」 木陰に座っている紫音は再び海を見ていた。華奢な体つきの少女だ。紫音から少し離れた所に卓斗が座る。白い砂浜に鞄を置く。 「どうしてここにいる」 その言葉を聞くと紫音は膝を抱えた。 「分からない」 彼女をよく見てみると小刻みに震えていた。それに波が押し寄せてくる度、怯えている。 卓斗はそれを不思議に思った。 「お前‥‥海が怖いのか?」 「そう。綺麗────なのに怖い」 [しおりを挟む] [mokuji] |