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「……半分俺が持とうか?」


思いがけない言葉に一瞬戸惑った。


 倉橋ってこんなタイプだったか?でもまぁ手伝ってくれるなら頼むか。一人で職員室まで行くのも何だしな。


「じゃあ任せる」


私は倉橋に紙束の半分より少し多めにを渡した。男の方が力強いしな、それぐらいいいだろと思いつつ。


「最近彩ちゃんってどんな感じ?」


階段を下りていく途中、倉橋が話しかけた。私は眉をひそめた。


「どんな感じって‥‥。お前まだ彩のこと諦めてなかったのか」

「ちっちげーよ!……何かお前らの仲が悪くなったような気がするから…」


最後の方は呟くように言ったので聞き取りにくかったが、かろうじて聞き取った。


 意外と観察力あるなコイツ。


「そんなことないよ。倦怠期って奴かな」

「倦怠期って、おいおい」


倉橋は微笑した。私は初めて男が笑う顔を近くで見た。前髪は無造作に分けてあって肩につかないぐらいの短さ。どことなくひとなつっこくて、可愛らしい。


「ん?どうした?」

「……何でもない」

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