3/4 「んー…なんか休憩する時間も惜しい気がするんだよねぇ」 「だからって休まないままやってたらどっかでバテんだから気を付けろ」 同い年だけど上司に当たる彼は私の恋人でもある、だから事務所に2人でいる時は名前を呼ぶ。 ちなみに何故に上司になるのかと言うと入社して6年経った頃に試験を受けて主任になったからだ。 「はーい、気を付けます」 「ま、そんな頑張り屋な部分も俺は好きだけどな」 テーブルに袋を置いて「茶、淹れてくるから待ってろ」と言うので私はお礼を言いながらパーテーション側の椅子に腰掛けた。 (…相変わらず、まめで優しいよなぁ) 告白してきたのは彼からで、それは私が入社して1年半経った頃だった。 彼は専門卒で私は大卒だから同い年とは言え勤めている意味では彼が先輩となる、だから本当は先輩兼上司と言うのが正しいのかもしれない。 普段は厳しいくせに何時もと様子が違ったら何気なく優しさを見せてくれる…そんな人。 そんな彼の事は最初は苦手だったけど優しい面とか意外と子供っぽい面(同い年なのにそう思うのは変かもしれないけど)を見て段々と惹かれた。 そして入社して1年半経った頃に行われた飲み会の帰り道に告白をされた。 “何時も頑張ってて、嫌な奴とか当たってもきちんと対応している所とか…けど、どっか弱いとことかも気になってて。 俺はそんな翠川さんを1人の女として好きだ” 最初は飲み会の後だから不安に感じて、つい冗談はよしてくださいなんて言ったけど冗談じゃないと真剣な顔で言う彼に本気なんだと理解した。 (大体、送り方も紳士っていうかアレだよね…会社の人に茶化されないように時間を置いてから来てくれた。 その場で言っちゃうと酔っ払った男性社員が茶化したり…後は金曜の夜だから反対方面なのに送ってくれたし) 当時の事を思い出せばあの頃から私は彼に好かれていたんだなぁと思う、今日みたいに事務所に残って残業をしていれば差し入れか他に社員が居れば適当に理由を付けて終わるまで事務所にいてくれる。 それ程に好かれているのに私は彼に何が出来ているのだろう、プライベートでも大事にされているのに公の面でも周囲にばれない程度に扱ってくれている。 けれど私は? 私は一体何が出来ているんだろう。 仕事を頑張っていなければとかそこにプラスして弱い部分が無ければ恋愛に発展しなかったのだろうかとふと考える。 それと同時、給湯室でお茶を淹れていた進《すすむ》君が戻ってきた。 [しおりを挟む] [mokuji] |