3/7 「あのさ、合コンしない?」 「合コン?」 「うん!クリスマスまでには彼氏とか欲しーじゃん?久礼葉って彼氏いなかったよね?」 「まあ、いないけど……」 クリスマスなんてすっかり忘れていた。 正直、クリスマスなんてどうでも良かった。一時期は、聖夜は彼氏と過ごしたかったなんて乙女な願望を抱いたが、現在は何とも思わない。 カップルを見れば、ああ幸せそうだな、と思うだけ。羨ましがることなんて、ない。 「じゃあ決まりだねーっ!今日の20時からだから、来てね!」 「え、今日?う、うん分かった」 合コンは初めてだ。 セフレがいる私が言うのもなんだが、そういう経験は一切ない。そもそも私にセフレがいるって言ったら、みんな驚くだろう。 折角くれたチャンス。 少しは、期待してみよう。 これまでの、考え方は全て消して。 『乾杯ー!』 一斉にグラスを当てて、カチンと音が鳴った。皆は楽しそうにお酒を口に運ぶ。 私は一度家に帰って、着替えてきた。 クローゼットにしまってあったワンピースを取り出して、それを着てきた。 前にショッピングしに行った時、思わず一目惚れして買ったものだ。買った後で、私には似合わない可愛らしいデザインだったと気付いて、一回も着ないまましまっていたものだった。 それを着てきたのは、昔の自分を変えようと思ったから。 メイクも、いつもよりちょっと気合い入れてみた。 そうこうしている内に約束の時間になり、こうして居酒屋にいる。ビールはあまり好きではないけれど、たしなみ程度には飲んでおく。 「えーそうなんだぁー!」 私を誘った友人は、早速アピールをしていた。あまりの近さにぎょっとしたが、周りは気にしていないようだった。 人数は私を含めて六人。女性は私以外可愛らしい子で、勝ち目はないだろう。最初から、この子たちに勝とうとは思っていなかったけど。 男性は、普通。悪くはない。かといって、良くもない、かな。詳しく言えば、ちょっと私好みの人が一人いる。 すると、その人と目が合った。男はにっこりと微笑んで、私の近くに寄ってきた。 「こういうの、初めて?」 「あ、はい‥‥。どうすればいいのか、わかんなくて」 「ただ、話せばいいだけだよ。えっと、久礼葉ちゃんだっけ?趣味は何?」 「映画鑑賞、です」 「敬語じゃなくていいよ、俺とタメなんだし」 [しおりを挟む] [mokuji] |