3/7 私は講義が終わってから、倉庫に出向いた。近くで見ると、部室みたいな建物だった。今は使われている形跡はなく、全体的に薄汚れていた。 そこに人の姿はなかった。静寂な空気が流れている。傍らに競技場やテニスコートにありそうなプラスチックで出来たベンチもあり、空いた時間を過ごすにはもってこいの場所だった。 空が、きれい。 ベンチに腰をかけて、何となく空を見上げた時だった。 きぃと古い音を立てて、ドアが開いた。 「……」 中から出てきたのは、茶髪の男だった。外見は、見るからに遊んでそうな感じで、私とは正反対な人間だ。 男は私を見ても、何も言わなかった。それから、じっとベンチを見つめたので、私はすぐにベンチから退いた。 そのまま男はベンチに座り、ポケットからiPodを出して音楽を聴き始めた。 私は彼をあまり好きじゃないと思った。 次の日、午後の講義まで時間があったので、再びあの場所へ向かった。あの男が、ずっとあそこにいるとは思わなかったからだ。 念のため、ドアノブを捻ってみる。途中まで回ったが、鍵がかかっているようだ。ベンチにはもちろんいない。思った通り、彼はいなかった。 [しおりを挟む] [mokuji] |