5.1
「誰なの、その男の子は」
落ち着いていて妙に冷酷な口振りで、ママが言った。
「あのねママ!この人は椿と言って猫のシルフなの!!」
パニックになって自分が何を言っているのか分からない。何が言いたいのかも、分からない。ママはゆっくりとした足取りで、こちらに向かって歩いてくる。いつもの笑顔はない。
「シルフ‥‥?人間になるとこうなるの?」
うんうんと必死に頷く。怖い。久々にこういうママを見た。そりゃ、私がずっと黙っていたからいけないんだけど。
でも!そんなことで椿を捨てないで!そんなの、可哀相すぎる!
「カッコイイじゃなーーいっ!!」
……え?
ぱぁあと目を輝かせたママは、椿に飛びついた。私はママの台詞・行動に思考が遅れて、反応が遅れた。どういうこと?
「やーん、シルフちゃんこんなに男前だったのね!ママ、惚れちゃいそうだわ」
「ママ?ママにはパパがいるでしょ?てかママ、驚かないの?」
「んー?そんなことぐらいで驚かないわよー。後でパパにも言っておくわね」
ウインクしたママは、上機嫌に鼻歌を歌いながら階段を降りていった。
こんな感じでいいのかな、森家……。
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