S.6


「椿さま!こんな所で何をしていらっしゃるのですか?」

「マリアさん。ここに猫が捨てられていまして、あまりにも可哀想だったので拾うことにしました。

そして、この三毛猫はお腹を空かせているように見えましたが‥‥食べてくれませんね」


マリアは椿の膝の上に乗っている凛乃うを、まじまじと見つめた。


「……何だかこの黒猫、凛乃さまに似ていますわ」


女の勘、というものだろうか。凛乃は思わずマリアを抱きしめたくなった。


「そうですか?」


だがしかし、椿は全くもってこの黒猫が凛乃だと分からないようだ。その鈍さに、椿の顔を引っ掻きたくなった。




椿がなぜか持っていたマタタビを小太郎に差し出し、マタタビで酔った隙に、椿は小太郎から離れることに成功した。

小太郎は椿に歯向かっていたが、椿は軽やかに攻撃をかわしていた。マリアは急いでいたらしく、あの後すぐに帰ってしまった。


「ただいま帰りました」


玄関には凛乃の靴ともう一つ、カロンの靴が置いてあった。カロンが帰ってきている、ということは凛乃の異常に気付いているかもしれない。


- 61 -

[*前] | [次#]
しおりを挟む

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -