S.6
「椿さま!こんな所で何をしていらっしゃるのですか?」
「マリアさん。ここに猫が捨てられていまして、あまりにも可哀想だったので拾うことにしました。
そして、この三毛猫はお腹を空かせているように見えましたが‥‥食べてくれませんね」
マリアは椿の膝の上に乗っている凛乃うを、まじまじと見つめた。
「……何だかこの黒猫、凛乃さまに似ていますわ」
女の勘、というものだろうか。凛乃は思わずマリアを抱きしめたくなった。
「そうですか?」
だがしかし、椿は全くもってこの黒猫が凛乃だと分からないようだ。その鈍さに、椿の顔を引っ掻きたくなった。
椿がなぜか持っていたマタタビを小太郎に差し出し、マタタビで酔った隙に、椿は小太郎から離れることに成功した。
小太郎は椿に歯向かっていたが、椿は軽やかに攻撃をかわしていた。マリアは急いでいたらしく、あの後すぐに帰ってしまった。
「ただいま帰りました」
玄関には凛乃の靴ともう一つ、カロンの靴が置いてあった。カロンが帰ってきている、ということは凛乃の異常に気付いているかもしれない。
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