7.4
全部全部、大切な思い出となったのに。
「何で、そんなこと言うの?あなたたちがくれた時間はとても嬉しかったのに…。何のために現れたのよ……。こんな別れ方、イヤ…っ」
ぽろぽろと涙が落ちて床に染みを作る。二人は沈黙したまま。次第に私は泣き崩れてその場にしゃがみ込む。
「すみません……」
椿はそう言うと私に近付いて頭を撫でた。刹那、全身の力が抜けて視界がぼやけていく。
これで、お別れなんて────
「飛鳥さん。私…」
まどろむ中で椿が飛鳥さんに言っていたが、もう何も覚えていなかった。
*
目が覚めると朝だった。今日は平日なので学校がある。起きた時間はいつもより30分早いので、余裕がある。はずだったのに、いつもと同じ時間になってしまった。
「ママ!!リボンどこにある!?」
「そこにあるじゃない。はい、カバン。気をつけてね」
「はぁい」
食卓に置いてあったロールパンを一口食べて、家を出た。箸が四膳あったが、急いでいたのでそんなことはすぐに忘れてしまった。
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