7.2
「来たか、椿。そろそろ来る頃だと思っていたぞ」
くるりとイスが回転して、こちらを見た。椿は軽く頭を下げる。
「お前が出した答えを聞く前に、まずは凛乃に伝えることがある」
机に肘を付いて手を組み、じっと私を見つめる。銀色に輝く瞳に捕らえられ、無言で飛鳥さんの言葉を聞き入ることにした。
「……椿から少しは聞いただろうが、あたしは特別な能力を持つ特殊な猫だ。ある日、人間界に生きる一人の少女が自殺したのがきっかけで、あたしたち猫が少しでも人間を救うことができれば、と思って椿らを人間の姿にした。
自殺した少女は両親がいなかった。小学校に入って両親がまもなく他界。
最初は元気な笑顔を見せていたが、孤独に耐え切れなくなったんだろう。マンションのベランダから飛び降りて、そのまま死んだ」
瞳を閉じて飛鳥さんは少し間を空けた。当時のことを思い出しているのだろうか。それから、再び口を開く。
「悲しみの花が咲く前に摘み取ってしまおうとあたしは考えてね。マリアは梨絵の兄の失恋を癒すため。カロンは学校に不満を持つ子を助けようと思っていたのだが……失敗したな。
それと、椿は凛乃の寂しさを無くすため。だが、変貌できるという点がまずかった。第三者にとって、面白いモノとしてしか見ていない」
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