6.7
学校に着くと、何だかザワザワしていた。カロンくんが留学してきた時と似た感じがするが、どこか違う。ひそひそする声が多い。まるで、いけないものを見たような。
廊下を走って、勢いよく教室に入ってくる生徒が、息を切らしてみんなが聞こえるように叫んだ。
「おい聞いたか!?カロン・エルバートって猫らしいぜ!」
次々に驚きの声が上がる。クラスが騒ぐ。サァーと顔の血の気がなくなったような気がした。
どうしてこうも次々と?一番まずいのは、カロンくんだよね。だけど、私に何ができるというの……。
考えるよりも先に、行動に出る。私は教室から出ていった。
「嘘、あのカロンくんって猫なの!?」
「でもさー、何だか不思議な感じがしなかった?」
「俺、前々から怪しいと思っていたんだよな」
「そうそう。走る時とか尋常じゃない速さだったし」
人の間をすり抜けながら走る。行く場所はもちろんあそこだ。
廊下を走っていると、いろんな話が耳に入ってきたが、どれもカロンくんの話ばかりだった。
「飛鳥さん!!」
素早く保健室の扉を開けるが、そこには誰もいなかった。その時、物陰から黒いものが私の前に飛び出した。
「シルフ!?」
黒いものは、黒猫のシルフだった。シルフはこちらの方を向いて、口を開いた。
「大変なことになっているみたいですね。今、飛鳥さんはある場所にいます。凛乃、一緒についてきてくれませんか」
二本足で歩くと人間の姿になった。私は、椿の瞳を見つめて、頷いた。
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