6.5


「私達、猫は気紛れな生き物です。なので、大体の猫は人間を便利屋さんみたいに思っていることが多いんです。

でも、その中にも人間を大事に思っている猫もいまして、助けたいと思う意思が強い猫だけが人間になることが出来るのです。

人間に変貌できる猫はこの町しかいないので、恐らく私を含め、四匹だと思います」

「人間を助けたい?あなたも、私を助けたいと思ったから人間になれたの?」

「そうです。飛鳥さん以外は人間を助けるため、不思議な力を授かったのです。飛鳥さんは元々珍しい猫なので、そのようなことも出来ます。

私達猫が人間になれるようになったのも、飛鳥さんのお陰なんです」

「そうだったんだ…。でも何で?何で私を助けたいと思ったの?」


こんな平凡すぎる私を、助けたい、だなんて。私なんかよりももっと、悲しい思いをしてる人がいると思うのに。

椿は歩き出して近くにあったベンチに腰をかけた。私も椿の隣に腰を下ろす。


「寂しそうな感情を持っていたからです。その寂しさを紛らわすように、明るく振舞ってきたんですよね。兄弟がいないから、友達の梨絵さんが羨ましかったんですよね。

名字で呼ばれるのが好きじゃないのは、自分と距離を感じるから。親しみを持って自分の近くにいてほしいから名前で呼ばれたい。

そんな寂しさを、私は助けたいと思いました」


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