6.4


「……分かりましたわ。それでは失礼致します」


マリアちゃんの顔に影が出来て、走って私の横を通り過ぎて行った。俯いていて顔はあまり見えなかったけど、うっすら涙は見えた。


「凛乃!」


椿は私がいることに気付いて、こちらへ向かってきた。私は走って椿に駆け寄り、抱きついた。

好きという気持ちが絶え間なく溢れ出てくる。そんな私の様子に、椿はやはり驚いていた。


「ばか。椿のバカ。もう、どこにも行かないでよ」


目に涙を溜める私を見て、椿もそっと抱き返してくれた。


「……私は、本当に凛乃に迷惑をかけてばかりいますね」

「ホントよ。でも、そこも好きだから」

「‥‥‥‥」


ゆっくり、静かに椿は離れる。刹那、寂しそうな表情を浮かべたのを私は見逃さなかった。今は、微笑んで私を見つめている。


「──凛乃。私達はなぜ、猫から人間になったり人間から猫に戻ったり、出来ると思いますか?」


冷静な口調で言う。椿の綺麗な青い瞳が幻想的に見える。

猫から人間、人間から猫になる理由など考えたこともなかった。当然、何も知らないので首を横に振る。


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