5.5
「あ、飛鳥先生」
私は図書室に来ていた。クラスにいると、カロンくんが話しかけてくるからだ。話しかけてくれるのは嬉しいんだけれど、他の女子からの視線がとても気になって仕方ない。なので、ここへ逃げてきた。
飛鳥先生は手を止めて、私を見るとしばらく考える素振りをした。
「今朝の、森凛乃か。世話になったな」
「いえいえ。飛鳥先生のお陰で遅刻が取り消しになりましたし、お互い様です」
「そうか。それと、あたしのことは飛鳥でいいぞ。そう大して偉い先生じゃないからな」
「うーん‥‥じゃあ、飛鳥さんで」
飛鳥さんは分厚い本を手にして読んでいた。何を読んでいるんだろうと思ったが、もう一つ気になっていたことを飛鳥さんに尋ねた。
「あの飛鳥さんって、ハーフですか?」
「ハーフ?何だそれは。そう言えばまだ言ってなかったな」
見ていた本を閉じて棚に戻す。飛鳥さんがこちらを向いて、腕を組んだ。
「何を、ですか?」
「あたしが猫だということを」
同時に飛鳥さんは猫の姿になった。茶色の毛並みが綺麗で、上品な猫だ。マリアちゃんと比べると、毛はとても短くて体が細長い。
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