4.5
「!!」
トラックが走り過ぎ去っていった。ドンと鈍い音はしなかった。
なぜなら、椿は飛び出した猫を捕まえると、庇うようにして抱き締めて、猫の姿に戻ったからだ。
トラックはタイヤが大きいので、底が高い。そのため、体が小さければ、上手く避けることができる。しかしそれは、とても危険な行為とも言える。
信号機が青色のランプを点す。
人々は、不思議そうにシルフを見て、通り過ぎていく。
「シルフ!!」
良かった、はねられなくて。良かった、無事で。
一気に押し寄せた安心感に、私は涙を零していた。
「凛乃ちゃん。ここは人が多いから、人が少ない場所へ行こう」
「う、うん」
私とカロンくんは、それぞれシルフと飛び出した猫を抱いて、その場を離れた。
道路に飛び出した猫は、ニャーと鳴いてシルフに頭をこすり合わせる。猫でいうお礼の行動なんだろうか。それから、その猫はどこかへ行ってしまった。
三人でその猫を見届けた後、シルフは二本足で立って、数歩その場を歩き人間の姿になった。
「ご迷惑をおかけしてすみません。凛乃、それからカロン」
「ホントに椿は……って。椿、カロンくんのこと知ってるの?」
- 30 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む