1.1
ある日、ふらっと道草をしている時だった。
いつもはさっさと家に帰っているはずだったのに、なぜか今日は早く家に帰りたくなかった。商店街から少し離れた所を歩いていて、そろそろ家へ帰ろうとした所だった。
「ニャー」
いかにもマンガかドラマにありそうな場面。ちらりと横を見てみると、電柱の下に段ボール箱が。そこから鳴き声がした、多分。
「ニャー」
ああ、やっぱり。でもどうしよう。いや別に一軒家だし、家族も特別動物嫌いじゃないんだけど、飼うとしたら……って感じ。
再び段ボール箱を見てみると、かわいらしい前足をかけてこちらを見ていた。
猫と目が合ってしまった。黒猫はじっとこちらを見詰めている。
森凛乃、15歳。高校一年生。もう高校生なんだから猫一匹の世話ぐらい、出来るはず。何とかなる!
こう見えて一人っ子だし、ペットとか弟か妹とかほしかったし、良いチャンスだよね。
よし、決めた。拾うよ、そんなに見詰められちゃ。飼えばいいんでしょう?飼えば。どちらかと言えば猫派だからねっ。ってそんなのどうでもいいけど。
私は段ボール箱の中から黒猫を抱き上げた。くりくりとした大きな瞳は透き通るブルーだ。吸い込まれそうになるぐらい、空と同じくらいの綺麗な色をしている。
「私が面倒みてあげるからねー!私は凛乃。君は──……、シルフね!!」
そう言うと黒猫シルフはニャーとまた鳴いた。
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