2.6


「私もね、シルフに起こしてもらった」

『シルフ?』


昨日拾って飼うことにした日本猫、シルフ。本名は椿。普通の黒猫だと思っていたのに突然喋り出した。さらに、人の姿になった!

これは言えない。誰にも言えるはずがない。例え家族にも、友達にも。パニックになって一大事になるだろうから。大変なことになるのは確かだ。

でも、ペットを飼った、と言うのは言ってもいいと思う。起こしてもらったのは“猫”ではなく“人”でしたけれど。

今日も、ウェルディはお手ができるとかウェルディはお腹を触られるのが好きとかそんな親ばか話をたくさん聞かされた。

いつもは凄いねやふーんと棒読みな感じで言っていたけど、今日は違う。何となく親ばかになりたくなる気持ちがわかった。

だけどシルフは猫であり、人間でもある。複雑な心境だよ……。
そうそう。ママが布団をはがした時、猫の姿に戻っていたのはね、シルフがこう言ってたんだ。


「シルフ!!どうやって元の姿に戻ったの!?」

「手の甲で頬をこするような行為をしたら、元に戻りました。推測ですが、猫みたいな動きをすると戻るみたいです」

「へぇ、そうなんだ。じゃあ人の姿になる時は?」

「それはですね、簡単でした。二本足で立って歩くだけです」


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