陳腐なドラマ
「もうダメ‥‥無理ぃ…」
「まだやれるだろ?ほら」
「そ、そんなにっ……」
バンッと机を思いっきり叩く。勢いよくシャープペンシルは転がっていった。手のひらがじんじん痛むのは気のせいにした。
「できるわけないからっ!」
参考書やら教科書やらプリントが、床一面に散乱している。膨大な課題を片付けようと、幼馴染みの彼に手伝ってもらおうとしたが、無理だった。
あまりの鬼畜さに心が折れそうになる。彼は少なくとも私よりは頭が良いので、間違ったことは言っていない。
けれども、言い方ってのがあるだろう。そんな教育についていけるのは、せいぜい私ぐらいじゃないかと思う。
「たった一枚にどれだけ時間かけてんだよ。だから、この問題はさっきの公式を使って……」
ふと彼が動きを止めて、私をじっと見つめる。またどこか間違ったのかと思い、慌てて教科書を捲った。
すると、彼は私の手を掴んで身を引き寄せた。一瞬、何が起きたのか理解ができなかった。
「数学飽きたからさー、保健の勉強でもしようか」
「は?保健?何言ってんの‥‥!?」
すぐに離れようとしたが、思ったよりも至近距離でかなり密着していたため、硬直してしまった。
彼は面白そうにクスクス笑う。一人慌てふためく自分が恥ずかしくなった。こんな冗談は、心に悪すぎる。
陳腐なドラマ (ありきたりも、悪くない、か)
20110318
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