最後のお楽しみ


「バレンタインですね」

「そーですね」


教室内はバレンタインムード一色。チョコ交換が頻繁に行われている。いろんなお菓子の香りが漂う。

今年は必ずもらえると思っていたチョコが、危機を感じる今日のこの頃。あからさまにアピールをしているのだが、彼女は全然興味なし。

手作りまでとは言わないから、せめて、せめて市販のチョコだけでも!
去年の俺とはさよならグッバイしたいんだ!


ちらっと隣に視線を送ると、いつの間にか彼女がいなくなっていた。仕方ない。近くにいた暇をもてあそばしている友人Aに話しかけよう。


「なあ。お前はさー、彼女からチョコもらったの?」

「当たり前だろ。トリュフ作ってくれたんだぜ。いいだろー」


くっ。コイツに聞いた俺が馬鹿だった。う、羨ましくなんかないからな!俺だってもらえるもんね!‥‥多分。


「俺はチョコをもらう時、こういうシチュエーションを期待する」

「どんな?」

「チョコがいい?デートがいい?それとも、ワ・タ・ぎゃぶぐはっ」


丁度良いタイミングに帰ってきた彼女が何かを察知したのか、俺のみぞおちに拳をクリーンヒットさせた。

彼女は何事もなかったように席に座る。友人Aは大したことないだろと言いたげな表情をしている。


「ま、せいぜい頑張りなよ」


生温かい目で哀れむように俺の肩を優しく叩く。非常にムカつく奴である。俺はそこらへんにいる負け犬とは違うんだよ!

そこで、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。同時に、俺のケータイが鳴る。

メールは彼女からだった。急いでメールを開くとそこには、『あとであげるから』との文字が。
思わず俺はニヤケてしまった。






20110212