風が運んできたのは、


古いアルバムを捲っていると、はらりと木の葉が落ちた。見上げれば、枯れ葉が風に吹き飛ばされそうになっていた。

葉は色付き、紅や黄色に染まっている。一段と冷えた空気を肌に感じて、秋だなと思う。

机の上に散乱している無数の写真。どれも懐かしく、様々な思い出が駆け巡る。
楽しそうに笑う自分。この頃は、本当に幸せだった。

青春の一ページ。
まさにそんな言葉がぴったりだ。

窓から入ってきた悪戯な風が、写真を拐って床に落とした。それを拾おうとして、積み重ねてあったアルバムに肘が当たってしまい、倒れてしまった。

一つのアルバムが床で開いていた。そこに写っていたのは、満開の桜と――

ぽたり、と雫が落ちた。
あの頃の記憶が、蘇ってくる。

アルバムには、たくさんの桜の花びらが貼ってあった。あの時のような、淡い桃色ではなく変色していて、経過した時間を物語っていた。


「……さよなら」


彼女はそう小さく告げると、アルバムを閉じて左手の薬指に填めていた指輪を取った。

そして、その指輪を静かにアルバムの上に置いた。




風が運んできたのは、
(貴方との記憶でした)







Theme:季節外れのアルバム
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From:箕郷浬
Since:2010.10.29