穢れなき純白


それは、庭のダリアが咲く頃。
ただ過ぎていく静かな時間を過ごしていた。

争いもなくなった平和な世界。
再び悪夢が蘇ったとしても、彼女と一緒なら何でもやり遂げる気がした。

彼女の赤髪に触れれば、隙をつかれて引き寄せられる。言葉の代わりに、唇を重ねられる。

ずっと、このままで、いられたら。

絡む指先をこちらに引き寄せる。彼女はその行動を見て、不思議そうに顔を覗き込んだ。


「どうした?」

「ううん‥‥何でもないわ。少し、怖くなって」


その言葉を聞いて彼女は大丈夫だ、と微笑みかけた。頭を包み込むように腕を回して、温かい眼差しを向ける。


「俺はどこにも行かない」


こくんと頷く。彼女なら、必ずそう答えると分かっていた。なのに、どうしてか不安になる時がある。

ああ、神様。
どうかこのまま、見守っていて下さい。
そう願いながら、もう一度彼女に触れた。






20100713