読みかけの本を


「ねーねー、本ばかり読んでないでちゃんとあたしの話しを聞いてよー」


彼女は彼の肩を揺さぶって甘える声で言う。腕に絡ませて彼の顔から気持ちを読み取ろうとするが読み取れなかった。


「……ちゃんと聞いてる」


彼は本に視線を向けたまま素っ気なく答える。彼女は更に彼の肩を揺すって言う。


「もーっ!!ちゃんと聞いているならあたしの方を見てよー!」


バンッと机に荒々しくしおりをはさんだ本を置いて立ち上がった。びっくりした彼女が彼を見上げる。


「‥‥何?」

「トイレ」


そう言うとすたすたとその場を立ち去っていった。その行動にむーと頬を膨らませ、ふと机上にある本に目をつけた。

悪知恵が働いて、にやぁと怪しく笑うとその本にはさんであるしおりを別のページにはさんだ。