The die is cast


新聞や雑誌に取り上げられている、一人の男。彼の名を知らない者は、もはやいないだろう。
夜の街を背景に、横顔でこちらを見つめている。顔の半分は、仮面に隠され正確な表情は読み取れない。

彼は笑う。
ここにも一人、有名な男がいる。新聞や雑誌に写っている男と同じくらい、彼も世間に知られていた。


「今時、よくやるよな。なあ、サキト?」

「慣れれば意外と、楽しいものだよ」


ビルの屋上に佇む二人の姿。
聞こえるのは、風が吹き抜ける音。

サキト、と呼ばれた男は、顔の半分は仮面をつけており、全身真っ黒の服を身に纏っている。見るからに怪しいこの男は、そう、怪盗だ。


「君も、よくそんな堅苦しい世界にいられるね。ある意味、尊敬するよトシヤくん」


トシヤという男は、サキトとは対照的な服装で、全身真っ白な服を着ており、赤のネクタイが目立つ。更に金髪ともなればホストみたいだが、これでもれっきとした警察である。


「そりゃあ光栄だね。しっかしまあ、お前も誰かを殺していれば、簡単に捕まえてやるんだけどな」

「人を殺すなんてとんでもない。範囲外だよ」


やや大袈裟なリアクションをするサキトに、トシヤは小さく笑う。
彼らは、生まれた時からライバルだった。
性格も、生活も、全く違う二人。

彼らは笑い合う。
この戦いは、まだ、終わらない。






For:moon fish様
Thema:賽は投げられた
From:箕郷浬
Since:20100515