Crasy again


「オレ、萩山さんが好きなんです!」

「よーっす!」


呑気に教室へ入ってきた彼に、二人の視線が集中した。女の子の方は特に表情は変わらなかったが、男の子の方は露骨な表情を見せた。

空気を読んでいないのか、彼はにっこりと笑顔を浮かべている。その態度に男は、さらに眉間にしわを寄せた。

ようやく彼も今の状況に気付いたのか、先に滞在していた二人を見合って、男に言った。


「邪魔してごめん、わざとだけど」


ついに男はプチッときて、怖い顔をしながら彼に近付いていく。彼は言ってしまった後に、あ、やべと呟いた。

けれども、余裕な表情を浮かべている。彼がすぐさま女の子の肩を引き寄ると、男の目の前でキスをした。

突然の出来事に、男はその場に佇んでいた。
彼は魅惑な唇に笑みを作り、嬉しそうに答えた。


「この“萩山さん”は、俺の彼女なんで」


な?と彼に聞かれた萩山という女の子は、人の目の前でキスされたことが恥ずかしかったのか、頬を紅く染めて外方向いた。


「そうだったのか……」


先程の怒りはすぐに冷めて、男は肩を落として教室を出ていった。
男のその表情を見て彼は、ますます嬉しそうな笑顔をしている。


「信っじられない!慶馬のバカ!変人!悪趣味!」

「告白される鈴が悪い。てか変人と悪趣味はない」


人が悲しむところを見て笑うのは、まさしく悪趣味だと思う彼女だったが、今はそんなことはどうでもいい。

これからやってくるだろう、彼の“嫉妬”に逃げなければならない。


「今度は、前みたいにはいかないからな」








20100509