ラヴィリンス


「いつまで続けるつもり?」


乱れたシャツを羽織り、ボタンをとめている彼に声をかけた。彼は一瞬手を止めたが、再び身支度を整える。

彼女は軽く溜め息をつくと、ベッドの傍に落ちた自分の服を拾った。

好きでこんな関係を続けている訳じゃない。なのに、いつの間にか彼の腕の中にいる。

けれど、この関係を最後にしようと決して、彼の元にやってきた。
彼は一体何を思っているのだろうか。彼が嫌だと言っても、自分は終わらせるつもりだった。


「もう、青春ごっこは終わりよ。……分かってるでしょ?」


その言葉を聞いて彼はやっと彼女の方を振り返った。何も言わずに彼女に近づいて、静かに口付けた。


「──分かっていても、人間は欲望には勝てない」


愛しいものを見るように目を細めて、彼女の髪を指ですく。彼女はその手を掴んで、彼をまっすぐと見つめた。


「ごっこ、はやめるべきよ。私を捨てて、愛を見つけるべきだわ」


胸を押し返して目を背ける。
彼が愛すべき女性は、目の前にいる彼女じゃない。


「さよなら」


わざとらしく彼の薬指に光る装飾品に口付けて、彼女はこの場を去った。






For:星屑にララバイ様
Theme:青春ごっこ
From:箕郷浬