無機質な瞳


つい先程、ろくでもない男と別れた。何度言っても浮気をするから、嫌になって私から別れを告げた。

別れを言った時の態度も、最悪だった。軽々しくいいよ、なんて言ってきた。そんな奴、別れて正解。

そいつと飲む予定だったこの店は、私一人。今夜は私一人かと思って、一人で夜を過ごすのなんて何年ぶりだろうと思う。

アパートは私が借りているから、今頃荷物まとめて出ていく準備でもしてるのかしら。

目の前にあるビールの泡を見つめて、はぁと溜め息をつく。
一人暮らしに戻ったと考えればいい。前まではそうやって過ごしてきたんだから。

別れて清々したと思っていたのに、未だ残っている胸のモヤモヤ感。酔ってしまえば、これも消えるかな。

それから数時間、やけ飲みに見えるくらい飲んで、アパートに向かった。
一人で歩くのが新鮮で、こんなものあったっけと思うものもあった。

暗闇の路地裏、かすかなか細い鳴き声がどこからか聞こえてきた。ふと視線を落とすと、薄汚れた子猫が鳴きながら寄ってきた。

何かを求めるその丸い瞳に、私はどうしようもなく泣きたい気持ちになった。
思わず子猫を抱き寄せて、涙を零した。

──ああ、私は悲しいんだ。
そう、気付かされた。






For:moon fish様
Theme:孤独な夜に
From:箕郷浬
20100202