恋する乙女の○○
本日の授業が全て終わり食堂へ行こうとしていた所、思いも寄らない人に声をかけられた。
「なぁ、この後ヒマ?」
見上げれば、金髪がよく似合うピアスをした男。夕月クラスのトップであるナオト。まさかそんな彼から話しかけられるとは、誰が想像できただろうか。
彼はかなりの美形で、いつも傍らに女がいる。一部からは女たらしと悪く言うけれど、罪多きな彼なら仕方ないことなのだ。
はやる胸のドキドキを抑えながら、あたしは平然を装って答えた。表情は、満面な笑顔で。
「暇だけど、あたしに何か用があるの?」
「いや、これと言って用はないが……ビウと話したくて」
信じられない言葉が、耳から入ってきた。もう、あたし幸せ過ぎて課題100ページを10分で終わらせそう。その笑顔が素敵過ぎます。
「じゃあ、どこかレストランでも行こうか?」
そんな訳であたしから一緒に食事を誘った。シレウイ城学校の皆が利用している食堂ではなく、学校外にあるレストランへ向かった。
こんなこともあろうかと、前々から下調べをしておいたんだよね!高級な雰囲気が漂うけどそんなに高くないし、何よりカップルのディナーで利用するNo.1のお店!
これは行くしかないでしょ!ちょっとテンション高くなってきちゃった!っていうより、話しかけられた時点でかなりテンション上がってるっ。
レストランに入るなりメニューを見てあたしは生パスタを選び、ナオトはミックスピザを選んだ。
前菜だとかメインだとかきっちりしたフランス料理店ではないので、ファミレスに近い。何だかお昼ご飯みたいな感じだけど、それはそれでいっか。
あたしは生パスタをフォークに絡めながら、前から気になっていたことをナオトに質問をした。
「ナオトはさ、本命の女の子っているの?」
色々理由はあるのだろうけど、やはり気になるもの。あたしはナオトの顔を見ようと視線上げると、彼と目が合った。
「‥‥さぁな。俺にはよく分からない」
すぐに視線を逸らされてナオトは答えた。さっきの間は何だったんだろう。落ち着いていた心臓が、また急にドキドキ鳴り始めた。
あっという間に楽しいディナーの時間は過ぎた。色々な話をしていたら、もう遅い時間帯になっていた。
カップルが多い人通りを、ナオトと一緒にゆっくりと歩いていく。端から見たら、あたし達ってカップルに見えるのかな?なんて思っちゃったり。
気が付けば、シレウイ城学校の寮にたどり着いていた。エレベーターに乗り、最上階へ行く。あたしもナオトも夕月クラスだから、同じ階。 今夜はここまでかな…。
ピンポーンと音が鳴り、扉が開く。幸せな時間はこれでおしまい。ナオトにお別れを言わなきゃ。
「じゃあ」
「──俺の部屋、来る?」
「え?」
思いがけない言葉に思わず聞き返す。ナオトの瞳は真っ直ぐこちらを見つめていて、あたしは完全に捕われた。 口には出さず、こくりと大きく頷いた。
整えられた家具。色を抑えた部屋はとてもお洒落だった。胸の高鳴りは最高潮。心臓が口から出てきそうなぐらい。
するとナオトはあたしの肩を掴んで、唇を重ねた。ほんの数秒間、時が止まったように感じられた。 え、今……!
「ごめんな、今夜ビウを帰したくないんだ」
「ナオト……」
そんな言葉を囁かれて、あたしは寝室に運び込まれて押し倒された。それからキスの雨が降ってきた。
「なんちゃってね!きゃー!!」
「‥‥?急にどうしたんだ、ビウ?どこか頭ぶつけたか?」
「あ、いや、何でもないの!こっちのハナシ!」
「?」
これからルプーグ生活が始まるんだもの、そんなラブハプニングが起きちゃったりしてねっ!あ〜、今日のナオトもカッコイイなぁ〜!
過去拍手御礼20091230〜20100419
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