最後の夜〜forget love〜



朽ち果てた花。
過ぎ去っていった時間の、巻き戻しは出来ない。
目の前に、これまでの出来事を物語るものが残っている。

どんな思いでいたのだろう。
どんな辛い思いをしていたのだろう。
俺は何一つ分かってやろうとはしなかった。

彼女の笑顔。
髪。肩。手。指先。唇。
全て、全て愛しい。
全て愛しかったはずなのに、手放して失った。

彼女が誕生日にくれた腕時計が、静かに時を刻んでいる。今更、彼女の存在の大切さを知った。何時間も一緒に過ごしていた時が、夢のようだ。

少しずつずれてすれ違っていった。
気付いていた──気付いたはずなのに。

最後の俺の願いを聞いてくれた彼女の表情は、これまでないぐらい儚くて、綺麗で、切なかった。

ベッドに残る微かな温もりが、どうしようもないほど胸を締め付けた。
雫が、静寂の中に溶け込んだ。




I regret meeting you.