贈り物をfor you!
ある日、プラハの元に一つの小包が届いた。差出人は“貴方の味方・箕郷浬”と書かれてあった。その名は、どこかで聞いた覚えがあるのだが、それがどこだったのか思い出せない。
然程大きくもない小包を開けて見ると、中には手紙と香水が入っていた。彼は手紙の封を開けて、目を通す。
“大好きな人を強く想いながらつけると、相手はメロメロになっちゃいます” 語尾にハートが付きそうな字でそう書かれてあった。“P.S.強力だから一回しか使えないので注意してねっ”と下の方に注意書きもあった。
とても胡散臭い感じがする香水だが、使えるもんなら使ってみようと思い、プラハは香水を自分に振りかけた。ふわっと広がる香りはフローラルみたいな香りで、臭いとは感じなかった。
「ケイルに会いに行ってみよう!!」
彼が強く想った好きな人は、ケイルという少々男勝りな黒髪の少女である。
*
「ケイルぅー!会いに来たよーっ!!」
いつものように元気よく手を振り、満面な笑顔でケイルに抱きつきに行く。彼女は自分の部屋ではなく、食堂にいた。
「今日のケイルもかわいいー」
「‥‥‥‥‥‥」
普段なら、黙れだの離れろだの嫌がる仕草を見せるのだが、今日は何だか違う。腕の中にいるケイルは大人しい。もしかして、あの胡散臭い香水の効果が発揮されたのかもしれない。
「ケイル?」
「み、見ないで!」
顔を覗き込もうとしたら、ケイルはとても恥ずかしそうにして手で顔を隠し、外方向いた。これは、完全にホンモノ!?
「かーわーいーいー」
益々調子に乗ってくるプラハ。周囲からの視線なんて、気にしてはいない。ケイルはかなり気にしているようだが。
「は、恥ずかしいから部屋に行こ?」
頬がほんのり紅く染まっている顔で上目遣いをされたら、即ノックアウト。プラハの表情はニヤけてニヤけて仕方なかった。
場所は変わり、現在ケイルの部屋。いつの間にかソファに座り、寄り添いながらテレビを見ている。
(何かこれ、恋人みたいじゃね!?)
テレビの内容よりも隣に座るケイルのことでいっぱいだった。幸せすぎて、時間が止まってほしいぐらいだ。 ふとケイルと目が合う。お互い長い間見詰め合う。これはチャンスがやってきたようだ。
彼女は静かに目を閉じる。徐々に二人の距離が縮まっていく。遂に、遂にケイルとのチューが……。
「消え失せろ」
ドカッとアッパーが見事に決まり、一気に身の回りの景色が吹き飛んだ。 ──一体、何が起きたのか把握出来なかった。 今いる場所はケイルの部屋ではなく自分の部屋だ。プラハは、ソファで寝ていたようだった。
手紙にもう一度目を通す。すると、P.S.の下の方に新たな文章が書かれていた。
“良い夢を”
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