強引な貴方と、


何となく分かっていた。
あの人には、好きな人がいたっていうことを。
だけど諦めきれなかった。だから告白した。

結果は予想通り。でも、不思議とそこまで悲しくはなかった。それでも悲しいものは悲しい。あの人が目の前で彼女とイチャイチャしないことは幸いだけど、前より幸せそうな微笑みをするのは確か。


「はぁ……」


思わず溜め息が零れる。立ち直るには、少々時間が必要みたいだ。


「何溜め息ついてんだよ」


声がした方へ振り返れば、煙草を吸っていた池下先生がこちらを見ていた。相変わらずその姿は、似合わない。良く言えば、ギャップがある、かな。


「先生には関係ありませんー」

「何だその言い草は。話を聞いてやってもいいんだぞ」

「何ですか、その上から目線。いいです、池下先生にはきっと分からない悩みですから」


そう言うと、二人は黙り込んだ。しばらく沈黙の間が空いて、池下先生は携帯灰皿に煙草を詰め込んだ。今日はそんなに吸っていないみたい。


「もったいないよなー」


唐突に、池下先生は口を開く。空を見上げながら、彼は何を考えているのだろう。いつの間にか、先生は私の隣に立っていた。私は先生が言った言葉がどういうことなのか、少し知りたくなった。


「何がですか?」

「何がって、長谷寺をフった奴だよ。俺は好きなのになー」


「……は?」


たった今、池下先生が言った言葉が非現実的なことすぎて、受け入れられなかった。と言うより、予想外すぎて反応が遅れた。

あまりにも自然にさらっと言うものだから、その言葉の意味そのものを理解するのが遅れたと言った方が正しい。


「本気で言っているんですか?先生と生徒ですよ?」

「本気に決まってんだろ。今の時代にそんなのは関係ないな。で、お前はどうなんだ?」

「正直、前から気になってはいましたけど‥‥」

「じゃあ決まりだな」


そう言い切ると嬉しそうに微笑む池下先生。何だか、展開が急すぎて心が追いついていない。取り敢えず今は、私たちの関係は二人だけの秘密だ。




強引な方と、
(素敵なスクールライフを)






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